演劇

「ロマンス」  WOWWOWにて

「ロマンス」  

作/井上ひさし
演出/栗山民也
出演/大竹しのぶ、松たか子、段田安則、生瀬勝久、井上芳雄、木場勝己

~世田谷パブリックシアター Romance                                                             

ロシアの小説家・劇作家であるアントン・チェーホフの一生を描いた井上ひさしの書き下ろしで、豪華な豪華なキャストによるお芝居。テレビで演劇を見るときは、実際に劇場で見る場合とは明らかに臨場感が落ちる、と私は思っているのですが、それを差し引いても、文句なしに引き込まれました。

男性陣が皆、チェーホフを演じるという設定は面白く、その時代ごとのチェーホフを浮き彫りにするために、演じる俳優を替えていくのは効果的に見えました。大竹しのぶのパワーは今回も炸裂していて、特に、意地汚いリウマチを装う老婆の演技はよかった。対する松たか子はとにかく声がよく、歌声に伸びがあり、立ち姿も美しく、チェーホフを支える気丈な妹を存在感たっぷりに演じていました。

そして、豪華なキャストから発せられる言葉が、とても心地よく、心に響きました。演劇に対するチェーホフの想いが、それは作家の想いでもあるのだということが、痛いほど伝わってきました。幼少期のチェーホフは、「生涯に1つでもいいから、本物のvaudeville;喜劇を作るんだ」と決意します。ちなみにvaudevilleはフランス語なんですね。そして、医師として働きながら作品を書くうちに、「苦しみは内側に作るもの、笑いは自分の外側に作るもの」として、いかに笑いが大切であるか、ということに気づいてきます。最後には「演劇とは人間の運命を再現する場である」と。耳にすっと残ってくる台詞がいっぱいありました。ビデオに撮ったのでもう一度見ておこうと思います。

ロマンスは1月3日に放映され、翌日4日には宮沢りえ、市川海老蔵の「ドラクル」、6日には小栗旬の「カリギュラ」と話題の演劇が続いていて、このお正月週間は、楽しませてもらいました。3つの中ではこの「ロマンス」が私は一番のお気に入りでした。

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「恐れを知らぬ川上音二郎一座」 

千秋楽を迎えたので、感想を。Lineup_otojirou

一言で言えば、文句なしに「楽しかった!」堺正章さんの口上で笑いをとり、まずはぐっと心をつかまれる。きっと毎回「ついにユースケ・サンタマリアが台詞を全部覚えました」って言っているはず〈笑〉。はじめは音二郎と貞奴の誕生から生い立ち、出会い、そしてアメリカ巡業までの物語を正章さんの語りでトーキー映画のように紹介する。俳優総出で運動会のように走り回りながらコミカルな動きを見せる。

一変してアメリカのとある劇場の舞台へ。一幕はお金もなく、劇団員からも見放された音二郎が翌日「ヴェニスの商人」を日本語で上演すると言い出すドタバタ劇。二幕中盤でヴェニスの商人の劇中劇となるが、ここまではとにかく笑いが絶えない。舞台設定を日本の漁村にして、アントーニオは安藤二三郎になるといった具合。小村閣下への配慮でアントーニオを二人にしてみたり、与之助さんの台詞がアメリカ人にわからないだろうから、といって「スチャラカポコポコ」になるくだりは、三谷さんらしい発想。

そして、劇中劇の見せ場、ポーシャがシャイロックをやり込める場面あたりから、シャイロックと音二郎(そしてユースケさん)の立場を重ね合わせているんだ、と少し考えさせられる流れとなる。ポーシャを演じる貞の常盤貴子さんの声はとてもよく通っていて、とても美しかった。「皆がいるから、あなたはこうしてやってこれたの」という台詞もジーンときた。三谷さんがユースケを音二郎に抜擢し、周りをとにかく芸達者な俳優で固めたのはこういうことなのかな、と思う。ユースケさんはユースケさんらしくて好きだった。

また、この場面で去る堀内敬子さん演じるカメが、東北弁でまくしたてるくだりも絶品。もともと東北人かと思わせてしまうほど。「幸せになるためにはお互いのことを利用するんだよ!」って啖呵切るところなんてかっこよかった。女性のかっこよさといえば、戸田恵子さん。小柄で細いのに、存在感は抜群で、音二郎との過去を語るときの粋な感じと、劇中劇で演じたときのコミカルな演技(緊張のあまり観客席を睨み付けてしまう!)がとくに印象的。瀬戸カトリーヌさんの芸達者ぶりも。すごかった。客席から出てくることも多く、お客さんを大いに盛り上げてくれていた。

男性陣も負けていない。阿南健治さんはとにかく動きが軽妙で、泥棒さんにぴったり。何度も舞台中央に「ご主人様お呼びでございますかー」といって参上する場面と、舞台から去る場面は、この舞台でいちばんみんなの拍手喝采を浴びていたように思う。それから「消臭プラグ」の殿こと今井朋彦さん!大真面目を滑稽に見せる天才だ。小村閣下の小林隆さんは、新撰組の源さんなどドラマなどで見かけるときは穏やかで優しい人物が多いけど、今回はコミカルに演じきっていた。‘ミソサザイ‘のくだりは笑えた。浅野和之さんの蔵人さんは女形。舞台の端にいるときでさえ、コミカルな動きをされていて、目が離せなかった。そしてW堺さん。正章さんは、劇中劇で一人何役も演じさせられ、かすれ声で疲れきっているところなんて、なんて上手いんでしょう。運動量は一番要求されたのではないかと思う。そして堺雅人さん。唯一の常識人かつ突っ込み役で、ほぼ出ずっぱり。戸田さんと堺さんが舞台を締めていたように思う。表情の変化がとてもめまぐるしくて、いきいきとしていたのが印象的だった。

二幕の後半は三谷さんらしくすべての役に見せ場をつくって退場させていく。3時間を越える長い芝居もあっという間に感じられた。12月に2回目を見たときは、台詞や流れ、小道具も変更が見られ、よりスムーズになっていたし、役者さんがより楽しそうに演じられていた。幸運にも最前列真ん中でみることができて、役者さんの息遣いや汗を感じることもできた。

最後に杮落としとなったシアタークリエ。狭いスペースながらすっきりしていて、特にトイレの工夫には感心した。1回目は演劇をほとんど見ない母を連れていったが、心から楽しんでいた。「商業演劇」という言葉の定義は別として、見に来た人すべてが「あーよかった」と思えるお芝居だったと思う。出演された俳優さん皆さんのファンになった(母もそうらしい)。出演者、スタッフの皆様、三谷さん、本当にお疲れ様でした。そしてありがとう♪

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