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「東京奇譚集」

「東京奇譚集」村上春樹著

-失くした物をとりもどす-

単に取り戻す本人だけが苦労したり努力したりするのではなくて、ちょっとした何か、でもとても不思議な何かが取り戻すための力や勇気を与えてくれている

そんなテーマの5編からなる短編集でした。キーワードがあって、暖かさがあって、少しファンタジーの要素もあって、力を抜いて読める本でした。本を読んでいて、内容よりも読後感や読中感が強烈に印象に残ることがあります。もちろんそれは内容によるのですが、今回はとても穏やかな気持ち、5編の主人公たちとともにこれからを見つめた颯爽とした気分になる、といtった読後感でした。

「偶然の旅人」

平日の空いているカフェで同じ本を読んでいる人が隣に座っていたら。。。性同一性障害の主人公(男性)がこの出会いから断絶している実の姉との関係を取り戻すきっかけになります。この短編に出てくる主人公はピアニストで、プーランクが好きだという設定。プーランクのピアノ曲は心地よくて、それは聴衆よりも演奏している本人が楽しめる音楽のように思います(悪い意味ではなくて)。世間の偏見のなかで、自分らしく生きている主人公が好むのも納得できます。

「ハナレイ・ベイ」「日々移動する腎臓のかたちをした石」

「どこであれそれが見つかりそうな場所で」

非常階段がキーワード。失踪した夫の捜索を妻から頼まれた主人公。失踪した場所である非常階段を行ったりきたりするなかで、いろんな背景が見えてくる。。この夫は一過性全健忘だったのか。。。心因反応だったのか、などと思いをめぐらせながら読んでいましたが、後者の設定だったのかな。

「品川猿」

自分の名前を思い出せない品川在住の主人公。ひとりのカウンセラーとの出会いから、その原因が高校時代の後輩の死と関係していることが明らかになっていきます。でも直接表現するのではなく、寮の名札、名前をとる猿、嫉妬、母の愛情といったキーワードと絡められ、ファンタジーのように仕上げてあり、5編の中で一番面白く思いました。

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コメント

「東京奇譚集」を読んでいただきまして有難うございます。
私は「品川猿」が一番すきです。
表紙カバーの猿の絵も気に入ってもらえると嬉しいです。
(´・ω・`)ノENOKI

投稿: eno | 2008年1月30日 (水) 10時19分

enoさん、コメントありがとうございます。装丁の猿がenoさんの作品だったとは。購入するときも印象が強く、この短編集の読後感と絵の醸し出す雰囲気がとても合っていると思いました。他の作品もホームページで拝見いたしましたが、どれも素敵でした。いつか作品を直接見に行きたいと思います。

投稿: irish breeze | 2008年1月30日 (水) 23時27分

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